salon S
東京都渋谷区, Japan
独立と共有を同時に獲得する
原宿・表参道エリアにあるサロンの内装計画である。天井高2.3mのマンションの約10畳の部屋に、最大5人の客と3人のスタッフが同時に滞在する。この小さな部屋の中で、客にゆったり時間を過ごしてもらうことを考えた。
壁面に対してできるだけ大きな鏡を設置し、ひとりひとりの目の前に大きな鏡像を出現させれば、自分だけの広い視界が得られるのではないか、と考えた。部屋全体に鏡が広がると、反射で部屋が広がるし、ビルの前のスギの木の風景も部屋の中に入り込んでくる。一方で、鏡を増やすと、鏡の中に他の人の鏡像が入り込んでしまい、サロンでのひとりでくつろぐ時間が壊れてしまう。
そこで、3枚の鏡と、2枚の緩やかに歪んだ鏡を設置した。5枚の鏡に映った景色が部屋に浮かび、部屋全体が明るく広がる。2枚の熱処理で歪めた鏡は、視線の見合いを緩やかに曲げて、周りの景色を動的に揺らし、鏡の中のそれぞれのスペースを曖昧に分けている。
各々が特別なスペースを持ちながら、空間を共有していることに魅力を感じている。都市の中で考えていたことを、小さな美容室の部屋の中でも考えた。