等々力の小さなシェアオフィス
東京都世田谷区, Japan
外部と一体的な周縁ファサード空間の集合が街をつくる
小さなテナントスペースをシェアオフィスにする改修計画である。私たちは、街に対して独立したインテリアではなく、街の一部となるような、街と連続するような空間を目指した。
このテナントが入る鉄筋コンクリート造6階建てのマンションは、交通量の多い目黒通りと分岐した一方通行の道路の三差路に建つ。私たちが改修したのは、そのグランドレベルのちょうど角にあたる30m2ほどのスペースだった。この小さなスペースは三角形に近い台形の平面形状をしており、小さなスペースに不釣り合いに、大きな開口部を3方向に持っていた。シェアオフィスには、工務店と設計事務所ふたつの会社が入る。私たちは、ふたつの集団という区分ではなく、執務・工作・打ち合わせといった行為の区分を優先し、空間を3つに分けることにした。行為を抽出した空間の区分は、外部に対して意識を持ちやすく、この街との関係が上手くつくれると考えたからだ。
元もとの小さなスペースを、道路に開いた既存の大きな開口を手がかりにさらに小さく分けると、3つの空間は、外部と一体的な周縁ファサード空間となって街に現れた。具体的には、打ち合わせ室は金属のような質感のカーテンを背景に持つ舞台または縁側のように、工作室は時にはショーウィンドウのように現れ、街とコミュニケーションを取る。また、3つの周縁ファサード空間は、お互いにとっての奥の間という側面も持つ。ここには中心の間も裏もない。
ひとつひとつの空間の集合が街の雰囲気をつくるということに、改めて向き合ったように思う。都市のスケールから見れば粒のように小さなスペースでも、街の全体像を想像しながら各々の空間を設計すること、その積み重ねが重要だと考えた。