物語的改修によるリトリート

神奈川県鎌倉市, 日本
写真 © Tomoaki Makino
写真 © Mina Tabuhi
写真 © Tomoaki Makino
写真 © Tomoaki Makino
写真 © Mina Tabuhi
写真 © Tomoaki Makino
写真 © Tomoaki Makino
写真 © Tomoaki Makino
写真 © Tomoaki Makino
建築家
邸宅巣箱 / 早坂直貴+斧田裕太+中村一翔
場所
神奈川県鎌倉市, 日本
2019

鎌倉材木座にあるこの300坪の土地と築90年の屋敷。ここは1930年代当時の面影を遺す稀有な場所であったが、その広さゆえに利便性が悪く、利活用の目途が立たずにいた。本件はその再生を図った改修計画である。

計画はまず内装解体から始まった。解体前の天井高は2.5mで、雑壁は土壁で仕上げられていた。
そしていざ天井を壊してみると、2.5mラインを境目に土壁は頭打ちとなり、頭上に無骨な小屋組み空間が露わになった。それは90年間、誰の目にも留まらずとも確かにそこに存在し、文字通り屋敷を支えてきた象徴的なエレメントである。対して土壁には、多数の増築や補修の痕跡が残っていた。この壁は小屋組みとは対照的に、90年間アップデートされ続けることで貢献してきたエレメントである。この2.5mを境目にしたコントラストに、屋敷の改修歴を貫くある種の物語性を見た。

計画はこの手つきを踏襲して、原則FL+2.5mラインの下のみに手をつけている。今日の建築的所作も、屋敷の改修歴と地続きにつながるよう図ったのである。

そして改修を終えた現在、この屋敷は一棟貸しの宿として運営されている。90年の年月を経て、かつての別荘が再び別荘的な場所へと立ち返ったことに、粋な巡り合わせを感じる。

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