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神奈川県川崎市, 日本
- 建築家
- 山縣洋建築設計事務所
- 場所
- 神奈川県川崎市, 日本
- 年
- 2011
ゆるやかなレイヤー」
敷地はクヌギやコナラなどの武蔵野の自然林の山の裾野に寄り添うようにある。車が1台やっと通れるような幅の狭い私道を30mぐらい入った奥にひっそりと敷地はある。このアプローチのアイストップのように敷地の入口の脇に2本のモミジがあり、また敷地の南端には高さ10m以上あるモミジの大きな木があった。西側の山の自然林は圧倒的なボリュームで敷地に迫り、威圧感さえ感じるほどだった。こうした特徴ある敷地条件に対して、まずそのポテンシャルを最大限に利用することを考えた。ちょうど敷地が山に寄り添うようにあるように、建物がこの敷地の状況に寄り添うようにある状態をイメージした。
周囲の豊かな自然と完全に囲まれた内部空間との間に、いくつかの異なる空間の開放性をもつ領域を設定し、それらがゆるやかにつながっているような状態をつくりたいと考えた。具体的には以下の5つの領域を想定している。1.敷地外の人の手の加わっていない自然。 2.敷地内の人工的な庭。3.屋根、壁、床など建築的な要素で囲まれた外部空間。4.外部に対して大きく開いた開放的な内部空間。5.壁に囲まれた内部空間。これらの5つの領域を南北方向に並べたレイヤーをつくる。次にこのレイヤーを逸脱するような操作を加える。例えば、山から連続するように庭に貫入した丘、モミジの木の下のテラス、リビングとダイニングの間の中庭、テラスに飛び出したバスルーム、寝室の下のアプローチ空間などである。これらの操作により、層状の構成はあいまいになり、領域が混ざり合い混沌とした状態になっている。
アプローチの通路から敷地の地盤面が1m上がっているレベル差を利用しながら、建物は半分埋まるようにつくられている。建物の高さは低く抑えられ、西側の緑地の山に対して控えめに寄り添うように建っている。建物を埋めるために掘削した残土を使って、敷地の南側の崖部分に添わせて人工の丘をつくることにより、崖の崩落を防ぐとともに、残土処分費を削減している。建物内の床は6つの異なるレベルが設定され、それらはアイレベルより低い段差でゆるやかに分節されながらつながっている。アプローチの通路から最上部の2階のテラスまで、螺旋状にゆるやかに上るにしたがって、レイヤーを横断する様々なシーンが展開する。
開放性の異なる5つの領域がゆるやかにつながり、混ざり合うことにより、様々な「うち」と「そと」の関係が現れては消える。季節、時間帯、天気や気分に応じて、居心地のいい場所を見つけて暮らせるような家となることを目指した。
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